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『青色発光ダイオードの発明 ノーベル物理学賞2014受賞』

2014年のノーベル物理学賞は、赤﨑勇、天野浩、中村修二の3名の先生方が「高輝度で省電力の白色光源を可能にした青色発光ダイオードの発明」によって受賞されました。

J-GLOBAL foresightでは、今までも山中伸弥先生、ヒッグス粒子と解析を行ってきましたが、今回はJSTのもつ情報資産をできるだけ用いて本研究分野を把握することを試みましたので、紹介します。

JST情報資産について

JST情報事業においては、1980年以降の国内のほぼ全ての科学技術論文誌や予稿集等 約12000誌、海外の主要な科学技術論文誌等 約4100誌の科学技術文献の書誌情報を整理して提供している。JST情報資産には、①海外のデータベースに載らない国内の科学技術文献まで入っている。②著者名が名寄せされており漢字で検索できる。③キーワードについても科学技術辞書を用いて同義語とまとめて検索できる。などの特徴がある。

図1は通常、このような評価に使われるトムソンロイター社の“Web of Science(以下、WoSと呼ぶ)(Web版)”で、赤﨑先生(I. AKASAKI)の論文数をカウントしたグラフである。

(注)なお、WoSにおいては、氏名が過去において「イニシャル+姓」で登録されている。J-GLOBALの研究者検索で調べたところ、「H.Amano」、「S.Nakamura」では、同姓別人の方がおり別の研究者も含まれる可能性があったので、赤﨑先生のみを対象とした。

WoSのWeb版での“I.AKASAKI”で検索した論文数データ

図1 WoSのWeb版での“I.AKASAKI”で検索した論文数データ

一方、JSTの情報で同様に赤﨑先生の論文数を求めたところ、以下の様になった。

JSTの文献情報で“赤﨑勇”(名寄せ処理済み)で検索した論文数データ

図2 JSTの文献情報で“赤﨑勇”(名寄せ処理済み)で検索した論文数データ

実際には検索結果を細かく調査し重複割合を比較する必要があるが、件数としては、WoSに載っていない我が国の論文まで掲載されているJST情報資産の方がWoSより多いことが分かる。

実際のデータは、JSTの科学技術情報検索サービス J-GLOBAL(http://jglobal.jst.go.jp/)より検索できる。さらに2014年10月現在 特設ページ(http://jglobal.jst.go.jp/footer.php?page=info20141016)上に今回の受賞者の方々の論文・特許・研究課題一覧提示中である。

JST情報資産での論文分析

次に、JST情報資産で、索引語(人がこの論文の主題と考えた数語のキーワード)に「青色LED」がある論文を分析した。

JST情報資産で索引語に青色LEDを持つ論文のうち、窒化ガリウム シリコンカーバイド セレン化亜鉛を同時に持つ論文の割合 凡例

図3 JST情報資産で索引語に青色LEDを持つ論文のうち、窒化ガリウム シリコンカーバイド セレン化亜鉛を同時に持つ論文の割合

*なお、本グラフの作成についてはJSTが取り組んでいるRDFを使って簡単にデータを抽出している。

図3より、索引語に、青色LEDを持つ論文の中で、同じく索引語に、窒化ガリウム シリコンカーバイト セレン化亜鉛 を持つ論文数をグラフで表した。なかなか実際の青色LEDとしては、それぞれの材料は高輝度では光らず、困難を極めていたが、本技術が広く知られた1991年以降に窒化ガリウムが伸びると同時に、青色LEDを索引語にもつ論文も合わせて伸びていることが分かり、窒化ガリウムができたので青色LEDができたことを示している。

なお、JST情報資産の中で索引語に“窒化ガリウム”を持つ論文数の推移を求めると次のようになる。

JST情報資産で索引語に“窒化ガリウム”を持つ論文数推移

図4 JST情報資産で索引語に“窒化ガリウム”を持つ論文数推移

図3の青色LEDの場合に比べ、窒化ガリウムに関する論文の数は非常に多い。

JST情報資産での検索ワードの推移

索引語(キーワード)に“青色LED”あるいはその類義語が入っている論文に関して、論文の索引語の推移を「GaN結晶ができて光った時代1986-1990」、「商品化の時代1991-1995」「応用利用が進んだ時代1996-1998」「1999-2000年」と分け、技術動向の変化がみられるか確認した。

なお、そのまま表示すると検索語の件数は非常に多いため、全期間を通して3回以上索引されている語句の中で各年代で大体50位に入る語句に対象を絞っている。(同順位が多いため、数は異なる。)

また、調査期間中で論文数が非常に増えているので、件数以外に、対象論文数に対して何%の論文にこの索引語が使われているかを出している。

対象とする論文によく使われている索引語一覧は、現在、株式会社ジー・サーチから、提供されている有料の文献データベース J-DreamⅢ(http://jdream3.com/)で検索することで入手できる。

青色LEDに関する論文の索引語の推移(約50位まで)

図5 青色LEDに関する論文の索引語の推移(約50位まで)

窒化ガリウムは、当初12.5%程度だったのが1991年以降は25%を安定して占めるようになっている。一方で、窒化ガリウム以外の青色LEDの有力候補であったセレン化亜鉛は最初25%程度あったが、1996年以降はランキング外に、炭化ケイ素も1999年以降はランキング外と研究が下火になったことが分かる。

一方で、レーザに関しては半導体レーザに関しては当初からそれを目指した論文はあった様子だが、1996年以降は量子井戸レーザなどのキーワードも見られるようになり研究が進捗していることが分かる。

また蛍光体や光源が1996年に出てきたのち、1999年からは白色とか照明器具さらには植物成長などが出てくることで、液晶光源や、照明機器、植物工場へと用途が拡大していることが分かる。

論文の被引用数推移(トムソン・ロイター社データによる)

残念ながら、現状JSTの多くの論文データには引用情報がついていない。(現在付与に向けて取組中)よって、WoSデータ(Web版)で被引用件数を抽出した。

トムソン・ロイター社WoSデータによる“窒化ガリウム”に関する論文の被引用数推移

図6 トムソン・ロイター社WoSデータによる“窒化ガリウム”に関する論文の被引用数推移

これをみると、被引用数は1991 1992年の段階でも少ない状態に見える。

赤﨑先生は、1987~1990年、1993~2001年にJSTの豊田合成に対する委託開発に参画しておられるが、特に1回目の委託開発については、WoS掲載の論文数も被引用数も少ない非常に早い段階で共同研究が始まっている。よって本件に関しては目利きの力が大きかったことが分かる。

*赤﨑先生の青色LEDについては、産学官連携ジャーナル“未踏の領域「われ一人荒野を行く」”に詳しく書かれている。

特許による分析

JSTの情報資産の解析のために、分析ツールβ版(http://jipsti.jst.go.jp/datause/)を提供しているが、今回はそれを使って特許の解析を試みた。

図7 分析ツールにて“青色LED”関係の特許出願の経年変化

全体 1993-1999
黎明期
2000-2006
拡大期
2007-2014
成熟期
1 パナソニック107 日亜化学工業42 パナソニック40 シャープ44
2 日亜化学工業60 豊田合成18 ソニー30 パナソニック35
3 ソニー45 パナソニック16 パナソニック電工21 凸版印刷29
4 豊田合成39 昭和電工9 シャープ18 東芝ライテック24
5 昭和電工36 東芝9 カシオ計算機15 東芝20
6 東芝35 富士フィルム8 フジクラ15 スタンレー電気18
7 凸版印刷31 ニレコ4 物質材料研究機構14 昭和電工18
8 日立電線4 リコー11 三菱電機10
9 セイコーエプソン4 コーニンクレッカフィリップスエレクトロニクスエヌヴィ11 サムソンエレクトロメカニックスカンパニー15
10 ソニー12
総出願数 225 592 657
主な
Fターム
5F041 5F041
4H001
2H191
5F041
4H001
2H191
3K243

表1 分析ツール結果を使った特許出願人推移(株式会社は省略)

(なお、企業名は現在のものにして名寄せを行っており、「例 三洋電機とパナソニック」トップ10より少なくなっているところがある。また、2012年以降は公開前なので早期公開のみの数値である。)

特許については、JSTは出願から20年以内の1993年以降の出願分の特許のみを扱っているため、本受賞対象の研究成果に関する特許はあらかた出た後のものでしか解析できなかった。しかし、1993年の日亜化学の青色LED発売後の特許出願のピークから、1995年の豊田合成での青色LED販売後の特許出願のピーク、そしてそれ以外の会社が様々な特許を出していることが分析できる。

仮に1993年から1999年までの黎明期、2000年から2006年の拡大期 2007年から2014成熟期で分けて分析をした。

主なFタームは、黎明期は5F041(発光ダイオード)であったが、成長期になると蛍光材4H001(発光組成物)や、2H191(液晶 光学部材との組み合わせ)が入り、バックライトでの利用に向けた特許が出てくる。更に成熟期になると3K243(非携帯用照明装置又はそのシステム)が入り、照明用途での利用へと用途拡大がなされていることが分かる。

黎明期

図8 黎明期での青色LEDに関する特許の出願数推移(上)とトップ5までの出願数推移(下)

この期間での出願人トップは1993-1995においては日亜化学工業が大量に出願しており42件、次いで豊田合成がコンスタントに出願して18件である。

(*BEST5のグラフの上で年代にカーソルを当てると、当該年度にトップ5までに入っている凡例の右側に件数が表示される。)

拡大期

図9 拡大期での青色LEDに関する特許の出願数推移(上)とトップ5までの出願数推移(下)

特許出願数は6年間で約6倍と非常に増えている

2000年から2006年は黎明期に目立っていた豊田合成や日亜化学工業以外の様々な企業が、参入して来ている。

成熟期

図10 成熟期での青色LEDに関する特許の出願数推移(上)とトップ5までの出願数推移(下)

(*2012年以降は早期公開分のみの数字)

2007年になると特許出願数は頭打ち又は減少に転じる。一方で、様々な機関から特許出願がなされ、照明機器などの応用の特許も増えて来ている。

なお、分析ツールβ版を利用すると、発明者の変化、発明者がどこの企業と関係しているか等についても、無料で知ることができる。また、特許に使われている用語の変化もトップだけだが調べられるので、興味があればお試し頂きたい。

J-GLOBAL foresight