科学技術情報流通技術基準

抄録作成

Abstracts and Abstracting



1. 適用範囲

 この基準は,一次文献の著者,学術雑誌等の編集者,並びに二次文献を作成する情報サービス機関による抄録の作成に対して指針を与えるものである。


2. 用語の意味

 この基準に用いる主な用語の意味は,次のとおりとする。

(1)抄録(abstract)

 記事内容の概略を迅速に把握する目的で作られた文章で,主観的な解釈や批判を加えず,記事の重要な内容を簡潔かつ正確に記述したものをいう。原記事の著者によって書かれたものを著者抄録といい,原記事の著者以外によって書かれたものを第三者抄録という。

(2)報知的抄録(informative abstract)

 原記事の内容(結果,結論を含む)を記述した抄録で,原記事を読まなくても,内容の要点が理解できるように作成されたもの。

(3)指示的抄録(indicative abstract)

 原記事の主題とその範囲を説明した抄録で,原記事を読む必要の有無を判断するのに役立つように作成されたもの。

(4)一次文献(primary document)

 研究,開発の結果や新しい知見などを記事の形で収録する文献をいう。雑誌記事,技術報告書,会議資料などがその例である。

(5)二次文献(secondary document)

 一次文献の書誌事項,抄録,所在などを情報利用者に伝達する文献をいう。抄録誌,索引誌,文献目録,雑誌目録,総合目録等がその例である。

(6)書誌事項(bibliographic element)

 個々の文献の識別,確認の指標となる事項。例えば,雑誌の記事においては,標題,著者名,著者の所属機関,誌名,巻,号,ページ,出版年,写真・図・表の数,参照文献の数など。


3. 抄録の要件

 抄録には,一次文献の一部として原記事に付属して掲載される抄録と,二次文献として原記事と別の個所に収録される抄録とがある。

3.1 一次文献における抄録

 一次文献における抄録は,原記事の標題,著者名,著者の所属機関などに続いて掲載することが望ましい。一次文献の編集の都合により特定ページに抄録を一括して掲載する場合には,それぞれの抄録に書誌事項を明記しなければならない。

3.2 二次文献における抄録

 二次文献における抄録は,必要な書誌事項を伴わなければならない。

3.3 抄録の標準的長さ

 和文で200〜400字,欧文で100〜200語を標準とする。ただし,短報等の場合には,和文で150〜200字,欧文で70〜100語を標準とする。

3.4 抄録に使用する言語

 我が国で刊行する一次文献には,原記事の使用言語の如何にかかわらず和文及び英文の抄録をつけることが望ましい。



4. 抄録の書き方

抄録を書くときの一般的留意事項は次のとおりである。

(1)客観的に書く。
 抄録は,原記事の重要な内容を客観的にかたよらずに伝えるべきである。抄録作成者の主観的な解釈や批判を加えてはならない。

(2)著者が読者に伝えたい内容を重点的にとりあげる。
 新規性のある内容や,著者が最も強調している知見は重点的に抄録に盛り込むこと。

(3)常識的な内容は排除する。
 その専門分野で常識になっているような内容は抄録に含めない。

(4)簡潔で明確な表現をする。
 抄録の字数は限られているので,ことばを選りすぐり,言いまわしを吟味して簡潔,明確な表現をしなければならない。ただし,極端な省略文体の使用は避ける。

(5)標題の内容の繰返しは避ける。
 抄録は必ず標題といっしょに印刷されるから,標題に書いてあることを抄録の中で繰り返すことは避ける。

(6)一人称は使わない。
 抄録の中では一人称代名詞及び類似の主語(例えば,“当研究所”など)は使わない。

(7)主題の取り扱い方を明示する。
 原記事の性格や原記事における主題の取り扱い方を明示する。例えば,“・・・を理論的に考祭する”,“・・・の現況を報告した”,“・・・を展望した”,“・・・の文献調査を行った”などのように記述する。

(8)図・表・数式番号の引用はしない。
 抄録中では原記事の図・表・数式番号などを引用してはならない。

(9)原則として,原記事で使われている専門用語を使う。
 原記事で使用されている専門用語を使用することを原則とする。原記事が欧文であるときの和文抄録においては,適切な和訳のない専門用語は原語のままとする。

(10)略語,略称,略号は,初めて出てくる箇所で説明を加える。
 ただし,隣接分野の読者にも明らかに理解できる略語,略称,略号は,説明を加えずに使用してよい。

(11)単位記号,量記号は,原記事に使用されているとおりに使用する。
 表記法については,JIS Z8202及びJIS Z8203に定めのあるものは,それに従う。

(12)商品名は,内容の理解に不可欠な場合に限り使用してよい。
 ただし,一般名,化学名を付記することが望ましい。

(13)数式,化学式は使用してもよい。

(14)図・表は原則として使用しない。



5. 原記事の種類による抄録の特徴

 抄録は,原記事の種類によって作成のしかたが異なる。以下では,一次文献における抄録に関して記述するが,二次文献における抄録の場合も,これに準ずる。

5.1 原著論文

(1)原著論文には報知的抄録をつける。

(2)以下の標準的な項目を考慮しながら,原記事の最も新規な内容を中心に記述する。

(a)前提

研究,開発,調査などの経緯,背景,定義など。

(b)目的.主題範囲

研究,開発,調査などの目的,取り扱っている主題の範囲。

(c)方法

用いた原理,理論,条件,対象,材料,手段,方法,手順,正確さ,精度など。

(d)結果

実験的・理論的な結果,データ,認定された関係,観察結果,得られた効果・性能など。

(e)考察,結論

結果の分析・検討,結果の比較・評価,問題提起,今後の課題,仮説,応用,示唆,勧告,推論,予測など。

(f)その他

研究・開発・調査の主目的外であるが,価値のある知見や情報で重要と思われるもの。

(3)原著論文の抄録では,一般に5.1(2)の(b),(c),(d)を詳しく書く。(a),(e),(f)は簡単に書き,場合によっては省略してもよい。

5.2 短報

(1)短報にも短い抄録をつけることが望ましい。

(2)短報の抄録作成における標準的項目としては,5.1(2)を準用する。

5.3 学位論文

(1)学位論文には報知的抄録をつける。

(2)学位論文の抄録作成における標準的項目としては,5.1(2)を準用する。
   ただし,(a),(e)も含め新規性を中心とした詳しい内容にする。

5.4 特許文献

 特許文献には,その発明の技術の新規な部分を明らかにした報知的抄録をつけることが望ましい。

(1)発明が,装置,方法,生産物又はそれらの組合せを対象とする場合には,抄録にその技術内容(技術的開示)を示すこと。

(2)発明が,生産物,特に合成物及び化合物とする場合には,その製造法及び用途についての技術内容(技術的開示)を示すこと。

備考:5.4は特許文献を技術情報として抄録作成する際に適用するものである。

5.5 総説,展望,解説

(1)一般の総説,展望,解説には指示的抄録をつける。ただし,内容が専門的水準が高くかつ詳しい場合には,報知的抄録をつけることが望ましい。

(2)以下の標準的項目を考慮しながら,著者が重点をおく内容を中心に記述する。

(a)前提,経緯,背景

(b)対象,目的,主題範囲

(c)内容,特徴

(d)考察,結論

(e)その他

(3)総説,展望,解説の抄録では,5.5(2)の(b),(c),(d)を詳しく書く。(a),(e)は簡単に書き,場合によっては省略してもよい。

5.6 紹介記事

(1)紹介記事には指示的抄録をつける。

(2)紹介記事の抄録作成に当っては,以下に示す標準的項目を考慮しながら,原記事の主要な内容を中心に記述する。

(a)対象
技術,システム,プロセス,装置,施設,構造物,材料,製品,団体,機関,組織,会議,展示会などの紹介対象。

(b)内容,特徴
作成者,主催者,テーマ,経過,特徴,性能,仕様,用途など。

(3)紹介記事の抄録は,5.6(2)の(a),(b)を簡潔にまとめる。


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