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J-GLOBAL foresightとは

背景

国立研究開発法人科学技術振興機構(以下JST)が事業成果の可視化プロジェクトを開始したのは、2008年4月である。 平成20年度予算編成の際、JSTのファンディング効果の評価を早急に進めることが財政当局より求められたことから、JSTは事業成果の可視化プロジェクトを開始した。 第4期科学技術基本計画(PDF:396KB)の中においても、「科学技術イノベーション政策の科学」等により、エビデンスに基づいた政策形成が謳われている。 これまで「国内外で科学的知見を利用した証拠に基づいた政策が形成されていない」という反省に基づいたものであるが、その背景には「政策情報の体系的なデータベースがなく利用できない点が大きかった」と言われている。 「各国とも政策の企画立案に関連した調査や研究を、自ら、あるいは委託して実施している」が、JSTは第4期科学技術基本計画に先駆けて、自ら準備をしていたとも言える。 それに必要となる客観性の高いデータ(ハードデータ)のうち日本文献に関しては、JST自ら蓄積していたということ、また外国文献に関してはThomson Reuters社Elsevier社から購入し、それらのデータを使用し、計量分析を実施していたからである。

各国の状況

(1)データの整備、標準化

米国では、2009年1月21日付けのオバマアメリカ大統領の"Open government memorandum"から120日目に実現されたと言われるDATA.GOVの立ち上げにより、政府が保有しているローデータを広く国民に公開、利用出来るシステムができあがっている。 これはオバマ大統領が、政府の透明化、オープン化として掲げた“Government should be”に続く標語”transparent”,”participatory”,”collaborative”が益々進化している事実を示している。

このDATA.GOVは、次なるターゲットとして政府のデータから大学等が保有するデータへと移している。 DATA.GOVの構築にあたり、大きな要となったのが、"DATA.GOV would operate as an index, not as an actual warehouse of data"である。 つまり、さまざまなデータをEcosystemの如く、自律的に連結していけることを理想とし、そのためにデータのフォーマットやデータへのアクセスを標準化することに取り組んだ。 さらに、GoogleMicrosoft®等がアプリケーションをオープンソースとして開発した。 その例として、Google Maps地図サービスや、Google Chart Toolsを上げることが出来る。 また、多くの企業も、DATA.GOVのデータと他のデータベースとのリンケージが進めば、イノベーティブなビジネスモデルが近い将来に構築されることを見込んでいるのである。

データの標準フォーマットとして、データのRDF化が進んでいる。 これは、Rensselaer Polytechnic InstituteData-gov Wikiプロジェクトにより行われている。 このプロジェクトではRDF化されたデータを使用して、サイト上で様々なデモストレーションを行うとともに、RDFSPARQLSPARQLProxyGoogle Visualizaion API等、データソースや使用した技術についても紹介している。

その後、英国オーストラリア等の国で米国に続いて、政府のデータのオープンが進んでいる。我が国においても経済産業省が「オープンガバメントラボ」の「データボックス」として、取り組みを始めている。

(2)フォーサイト(foresight)

また、社会は益々グローバル化が進み、様々な要素が複雑に絡み合いながら進化している。 未来社会は、さらに不確実性が増すことが予想される。 複雑に多くの要素が絡み合う多元的な構造から、将来起こり得るであろうことを一意に決めることは困難を伴う。 これを前提として、現時点で利用可能な知識を結集して未来への洞察を深める手段して、フォーサイト(foresight)がある。 フォーサイトとは、「先見の明」「将来に対する洞察力」「(将来の)展望」「(将来を見越した)配慮」等の意味を持つ用語であり、予測のことではない。 グローバル企業の多くが、戦略的プラニング室やフォーサイトのためのグループを立ち上げ、イノベーション戦略に取り組んでいる。

さらにGeorgia TechのAlan Porterは、様々なデータ(論文:Web of Science、特許:Derwent Innovation Index、企業データ:Factiva)を連結し、計量分析後、それらを基盤として、様々な有識者を集め、テーマの中長期戦略を練るフォーサイトの取り組みを行っている。 また米国OSTPのシンクタンクIDAにおいても同様の取り組みを今まさに行おうとしている。

J-GLOBAL foresight公開

このような背景の中、JSTは事業成果可視化プロジェクトをこれまで蓄積した情報資産等と連結し、計量書誌学的分析、特許分析等の結果や「エビデンスに基づく評価等の各種方法」を開発提案し広くご意見をいただく「チャレンジの場」としての実験サイトを公開した。 JSTの情報事業の基幹の一つである日本の論文や特許等の様々なデータ、それから導出される新しい指標をGoogle Maps™地図サービスやamChartsとマッシュアップして可視化することにより、研究開発・科学技術イノベーション政策の企画立案、推進・評価、大学・企業等の機関の今後の経営戦略立案に少しでも寄与したいという意図から、「foresight」という言葉を付加している。

一方JSTは現在並行して「JST知識インフラ」の構築を推進している。 これは将来的に「J-GLOBAL foresight」のデータ基盤となり、「つなぐ」というコンセプトで、JSTがこれまで蓄積してきた情報資産を有機的に連結する「Ecosystem」の実現を目指している。 現状ではデータ基盤のしくみはJST独自の仕様になっているため、「JST知識インフラ」ではRDF化等の世界標準的な仕様を取り入れる予定である。

「JST知識インフラ」は科学技術情報のDATA.GOVを、「J-GLOBAL foresight」はData-gov Wikiを目指している。

今後「J-GLOBAL foresight」では、科学が技術へ及ぼす影響としてイノベーションを捉え、学術論文が特許出願へ与えるインパクトを分析する「テクノロジーリンケージ」、特許と学術論文間の共引用関係からイノベーション創出に近い研究グループを見出す「イノベーションフロント」など、JSTならではの新しい指標や分析手法の開発を行い、提案していきたいと考えている。

J-GLOBAL foresight