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『iPS細胞(人工多能性幹細胞)の発見 ノーベル医学・生理学賞2012受賞』

山中伸弥博士(京都大学 iPS細胞研究所 所長)が、ノーベル医学・生理学賞2012を受賞されました。受賞対象は、「成熟細胞が初期化され、多能性を獲得しうる現象の発見」です。

多能性を獲得しうることが出来た細胞は、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell, iPS細胞)と呼ばれます。このiPS細胞の研究は、「JST指標:イノベーションフロント」においてもかねてから注目していた研究領域の一つです。

「JST指標:イノベーションフロント」は科学技術振興機構が開発した指標で、特許に引用されている論文のネットワークを可視化することによって、イノベーション創出に影響を与える可能性の高い注目すべき科学の専門領域を把握することが出来ます。

イノベーションフロント図(2012年5月公開版より抽出)

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円(文献)や、連結している線(共引用関係)をクリックしてください。
【凡例】

□・・・山中博士の著した論文   ○・・・山中博士以外の論文

日本の論文   日本の関与した論文   アメリカの論文

解説

図の□と○は論文を表し、□と○の大きさは論文の被引用回数に比例しています。 図の□は山中グループの論文を示しています。 □と○をクリックすると、図の下部に論文の書誌が表示されます。 また、□や○をつなぐ線は、両側の論文を共に引用した特許の数を示しています。 太いと何度も同じペアで引用されていることを示しており、関係が深い論文と言えます。

iPS細胞に関する特許に多く引用されている論文は22あります。 一番大きなピンクの□(以下コア論文と呼ぶ)は"Induction of Pluripotent Stem Cells from Adult Human Fibroblasts by Defined Factors(成人由来線維芽細胞から特定因子による多能性幹細胞の樹立)"(JSTプレスリリース)です。 2007年にCellに掲載されました。

ノーベル医学・生理学賞2012のキーポイントとなった論文は、2006年にCellに掲載された"Induction of Pluripotent Stem Cells from Mouse Embryonic and Adult Fibroblast Cultures by Defined Factors(マウス胎児および成体線維芽細胞培養から特定因子による多機能性幹細胞の誘導)"(JSTプレスリリース)です。

しかし、イノベーションフロントに現れている論文は、「Mouse Embryonic and Adult Fibroblast Cultures(マウス胎児および成体線維芽細胞培養)」由来の多能性幹細胞の誘導に関する論文ではなく、「Adult Human Fibroblasts(ヒト繊維芽細胞)」由来の多能性幹細胞の誘導に関する論文です。 実用化が進むにつれ、研究の対象が細胞、マウス、ヒトへと変化するのがライフサイエンス分野の特徴ですが、イノベーションフロントは実用化に近いテクノロジーに影響を与えている注目すべき科学分野を見ているため、コア論文は山中グループのヒトを対象にした論文になるのが特徴です。

イノベーションフロントを構成している山中グループの論文は、先述したヒトiPS細胞樹立に関する論文、初期化に必要な遺伝子を活性化するために必要だった4つの特定因子(c-Myc、Oct3/4、Sox2、Klf4)からがん遺伝子c-Mycを除いた3特定因子による初期化を示した論文、ウィルスベクターを用いずにiPS細胞の樹立を示した論文等、日本が関係する論文6つのうち4つを占めます(他は多国間国際共同研究と理化学研究所が1件)。

一方、米国においては、MITのJaenisch Rから4論文、ハーバード大学のHochedlinger, Kから3論文等、多くの拠点となる機関が育っていることが分かります。

iPS細胞の研究領域は、他のイノベーションフロントと比べても論文数が多く、競争が激化していますが、山中博士のノーベル医学・生理学賞2012受賞を機にこの研究領域の日本の国際的競争力強化を図る必要があると考えられます。

出典

Thomson Reuters "Essential Science IndicatorsSM"、"Derwent World Patents Index®"、"Derwent Patents Citation Index®"を基に、JST J-GLOBAL foresightにて情報事業が集計

J-GLOBAL foresight