研究論文の取り消し、20年で10倍

2009年08月24日

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研究論文が取り消される事態が近年急増している背景について、科学研究政策の専門家Zoë Corbyn氏が英国Times Higher Education上で論じている。

(概要)
論文取り消しの背景には、論文を発表しなければならないという研究者へのプレッシャーに起因する研究不正の増加と、剽窃検知技術の向上、編集者への対応要求がある。

Web of Scienceに基づく分析では、1990年の論文発表数約69万件のうち取り消し数は5件、2008年は各々140万件、95件であった。この期間の論文増加率を考慮すると、取り消し数はほぼ10倍である。Jan Hendrik Schonの高温超伝導捏造論文22本を計算外としても、取り消しは近年著しい。

英国研究公正局(UKRIO)長James Parry氏は、取り消し増加の本当の理由は不詳だという。不正行為件数が実際に増えているからか、検知件数が20年前より増えたからか。大半(most)は不正に因るが、解釈が誤っていたことに気付いて撤回する正直なケースも多く(many)ある。出版倫理委員会元会長Harvey Marcovitch氏も、数値が明らかになったことを歓迎している。(中略)

Medical Research Council(MRC)研究所員Peter Lawrence氏は、剽窃件数と検知件数が双方とも増え、論文取り下げ率が増加したと推測し、「悪しき文化"publish or perish"のため研究者は生き残りに必死だ」という。

[ニュースソース]
Retractions up tenfold – Times Higher Education 2009/8/20