助成機関のOA支援策(記事紹介)

2014年08月26日

ヨーロッパ

Research Information8-9月号掲載の、助成機関のOA支援策に関する記事"Research funders provide OA support"を紹介する。記事は、最近発表された、ノルウェー、中国、メキシコのオープン・アクセス(OA)方針と、ドイツ研究振興協会(DFG)および英ウェルカム・トラスト(Wellcome Trust)へのインタビューを特集している。

ノルウェー:OAジャーナルでの論文公開支援策として5年間の助成計画を開始。研究会議による助成研究か否かを問わず、OAジャーナルでの論文公開費用の50%までを助成する。またOA方針を改訂し、OAジャーナルでの助成研究の論文公開を奨励するとともに、セルフ・アーカイブを要求する。

中国:中国科学院(Chinese Academy of Science, CAS)は、研究者および大学院生に対し、学術ジャーナルでの査読済論文の公式発表から12か月以内に、最終稿を研究機関のOAリポジトリに保存することを要求。国家自然科学基金委員会(National Natural Science Foundation of China, NSFC)も同様の方針を公表し、12か月以内のエンバーゴ期間後、NSFCのリポジトリへの査読済、最終版のジャーナル受理原稿の保存を要求。

メキシコ:OA方針を採用し、"National Repository of Open Access to Quality Scientific, Technological and Innovative Information Resources of Social and Cultural Interest(試訳:社会・文化的利益の、質の高い科学技術、イノベーティブな情報リソースへの国営OAリポジトリ)"を構築中。

DFG:義務化ではない、OAを奨励する方針を採用。グリーン、ゴールドに関わらずOA公開に関する情報基盤の構築に対する支援を行い、論文のOA化に止まらず、研究データの管理・再利用を推進しようとしている。高等教育および研究の情報・通信技術(ICT)の活用と構築を支援する5組織による共同的取り組みKnowledge Exchangeに参加し、OA基盤整備に取り組んでいる。2014年5月に、全出版工程におけるイノベーティブなOAソリューションに関する要請"Open Access Transformation"を公開し、出版費用の支援策"Open Access Publishing"を2020年まで継続することを決定した。

Welllcome Trust:2005/2006年のOA方針導入時、OA化率は15~20%だったが、現在は70%と向上した。著者払いモデルを推奨し、APC情報リストの提供など支援を行っている。今年はライセンス情報を公開する予定。また著作権に関する法令の改定に積極的に取り組んでいる。ハイブリットモデルは確かに問題が多いと認識している。出版社による購読料の割引制度も選択肢の1つではあるが、そう簡単には進展しないだろう。


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