REFで集められた7,000件のインパクト事例を分析(記事紹介)

2015年02月18日

ヨーロッパ

英国高等教育助成会議(HEFCE)が2014年12月に公表した「大学の研究への公的評価:REF2014」で各大学から集められた7,000件の事例をもとに、研究評価を考察したネイチャー誌記事"Impact of UK research revealed in 7,000 case studies"を紹介する。

HEFCEは、研究の質をベースにして運営費交付金を配分するため、約6年ごとに研究評価を実施している。2014年度の評価活動Research Excellence Framework (REF)では、全学問分野の研究の質とインパクトを評価(評価ウェイティング20%)するため、7,000件の事例を各大学から収集した。ネイチャー誌はコーネル大学の物理学者Paul Ginsparg氏に依頼し、これら7,000件のケース・スタディのテキスト解析を試みた。

「研究」「インパクト」という言葉の頻度が最も高く、「開発(development)」「ポリシー」「ヘルス」も上位を占めた。また国名をチェックしたところ190か国の国名が出現し、研究が地理的広がりを見せていることが分かった。語彙の相関を分析したところ、どの分野でも「ミリオン」「マーケット」「政府」「メジャー」「グローバル」と深い関係を示す事例の評価が高く、他方「会議」「大学」「学術」「プロジェクト」を多用している事例は低スコアとの関連が見られた。因果関係は不明だが、評価者は経済効果に関する記述を好んでいることが示唆される。

このようなREFの評価の方法には議論の余地が残る。国としての研究導入している国が多いが、スウェーデンやチェコ共和国は同様の評価方法の導入を検討する一方、オーストラリアやイタリアなどはインパクトを評価していない。研究機関への負荷が大きい(米国のSTART METRICSプロジェクトの前ディレクターJukia Lane氏)、研究そのものよりも研究のインパクトの評価により多くの時間を費やさなければならない(オックスフォード大学神経心理学者Dorothy Bishop氏)など、REFの方法に批判的な研究者も多い。


[参考]

2015年1月号「大学の研究への公的評価:REF2014」<2014年度公的研究評価結果:HEFCE資料より> - JST 2015/1/5