ケンブリッジ大学学術コミュニケーション局ブログでは、3月26日RCUKが公開したオープンアクセス(OA)方針導入後の実施状況に関する調査報告書(小欄記事)のポイントを解説している。以下、記事より抜粋する。
- 総括:OAの考え方は概ね受け入れられているが、方針の実施、資金配分に掛かる管理負担が大きく、実施が難しいと受け取られている。
- ハイブリッド誌:ハイブリッド誌の論文掲載料(APC)は、購読料からも収益をあげているのにもかかわらず、完全なOA誌よりも常に高い。市場原理に則さず、引き続き価格が低下しないのであれば、RCUKは市場原理がより効果的に働くような方策を採るべきである。出版社は、ゴールドOAへの完全な移行のためには包括的助成金(block grants)による完全な助成が必要と回答している。
- 研究者の意識:このOA方針によって著者のOAに対する態度の変化は見られない。出版社の報告では、著者の論文投稿先の選択に変化はないとしている。著者のOAへの態度を変え、スムーズに移行するには、APCの中で研究機関から出版社に何が支払われるのかをさらに明確にすべきである。
- 報告上の問題:正確な助成論文の数、またこのようなデータを集める管理経費など、基準が定まらないまま、様々な解釈の上で、RCUKへの報告がなされていた。出版社からこのような情報を得ることが難しい仕組みとなっている点を指摘している。
- 方針を遵守しない出版社:APCが支払われた助成研究の相当量がCC-BYライセンスの付与という点で、OA方針を遵守していない。エルゼビアの場合、ゴールドOAで公開すべきRCUK助成論文のうちの40%にCC-BYが付与されていなかった。アメリカ植物学会はジャーナルがOA方針に対応しておらず、方針を変更する予定もないとしている。1種類以上のライセンスを提供する出版社もあり、著者にとっては分かりづらい。またAPCが支払われた後、実際にOAとなっているか否かを機関側がチェックしなければならないかなど、今後の分析が必要である。
- 使用許諾:報告書の中で頻繁に取り上げられている問題である。芸術、人文、社会学ではCC-BYライセンスの使用について、理にかなわない、実践的ではないとする反対意見が多く見られた。CC-BYによる論文公開が、著者が承認しない、また自己の論文として適切に認識されないため、商業的に利用されかねないという部分もある。出版社の多くは、研究者の多くがよく理解しないまま使用許諾に署名していると報告している。画像図書館など第三者が著作権を持つ場合に、デジタル再生資材への使用許諾に消極的である点が指摘されている。
- ケンブリッジ大学の支援体制;研究者が十分にOAを理解する必要がある。同大学では研究者は簡単な項目をいくつか記入し、簡単なインターフェースからファイルをアップロードするだけで、その後の処理はOAチームが作業を行う方法を取っている。
- 次回の導入後調査は2016年を予定している。
[ニュースソース]
A review of the RCUK review of implementation of its OA policy - ケンブリッジ大学 2015/3/26