生命情報科学者には見返りが必要(記事紹介)

2015年04月17日

北米・中南米

不足する生命情報学者の問題を取り上げる、4月8日付けネイチャー誌記事“Core services:reward bioinformaticians”を紹介する。著者はテキサス・ヘルス・サイエンス・センター大学生命情報学サービスセンター共同ディレクターJeffrey Chang氏。以下、記事より抜粋する。

2015年1月に発表された米国Precision Medicine Initiative(参考)は生命情報科学(バイオインフォマティクス)を頼みとしている。100万人以上の米国人から医学、生理学、ゲノムデータを集め、個々のパターンを見つけ、健康の向上を目指す。この2億1,500万ドル(258億円相当)のプロジェクトでは、人間の分析能力を超える生物学的データが蓄積されるが、このデータを分析する生命情報科学者が不足している。

ここ10年間、数十の研究機関により集中的生命情報科学施設が立ち上げられている。同氏の所属するセンターでは一連のサービスの標準化に着手したが、どのプロジェクトにも適用できる決まったサービスは20%しかなく、79%は多彩で創造的で、共同的分析の組み合わせを必要とする応用技術であった。生命情報科学で求められているものは、標準化されたパッケージではなく、カスタマイズされた分析である。プロジェクトの進行につれ、複雑になることもまた課題として挙げられる。

生命情報科学者には、自身の論文に利益となる新しいアルゴリズムの開発といった、純粋な生命情報科学に費やす時間はたった5%足らずしかなく、ほとんどの時間をその応用に費やす。プロジェクトには生物学者との連携が必要であり、求められるスキルも異なる。そのため自身の研究プロジェクトを行うことができず、研究機関の中で明確に独立したポジションがない。

物理学は歴史的に、大規模で高度に統合的プロジェクトであるため、情報科学者のキャリアパス、著作者としての規範、しかるべき功績を、完全な共同的役割りの中で明確にしようとし始めた。研究機関においては、応用生物情報科学者に最適な正式なキャリアパスがあるべきであり、助成機関は共同者を評価する指針を作るべきである。また生物学者自身にも生命情報科学のスキルを習得する機会を与える必要がある。

[ニュースソース]

Core services:reward bioinformaticians - 2015/4/8