ネイチャー誌5月25日記事“’Sleeping beauty’ papers slumber for decades”では、長期間引用がなくて突如被引用数が増加した論文を定量的に調べたインディアナ大学複合ネットワークの研究者Filippo Radicchi氏等の報告書を紹介している。なお、同報告書は米国科学アカデミー紀要で発表された。以下、記事より抜粋する。
通常論文の運命は公開から5年間の被引用数により決定されることが多い。しかし長期間眠っている論文でも、突如被引用数が急増するものもある。同氏等は、100年以上引用のない休眠中の論文が脚光をあびる、いわゆる「眠れる森の美女(sleeping beauty)」論文を調べるため、2,200万もの論文を分析した。「眠れる森の美女」の名づけ親は計量書誌学の専門家、オランダLeiden University's Centre for Science and Technology StudiesのAnthony van Raan氏。
Radicchi氏等は、被引用数が長期間かけて直線的に増加する論文を0、被引用数が急増するまで100年間休眠していた論文に10,000以上の得点付けをし、論文の被引用数と公開後の期間から算出される“beauty coefficient(試訳:美の係数)B“を導き出した。その結果、最高値11,600は1906年出版、2002年覚醒の”Concerning adsorption in solutions”という統計学の論文であった。因みに、著名なEinstein–Podolsky–Rosen氏の論文“Can quantum-mechanical description of physical reality be considered complete?”は14位。
このような現象は、統計的手法が生物学で利用されるといった、論文の分野外での研究に応用された場合に起こることが多い。この係数はまさに革新的な指標である(Radicchi氏)。同氏等は眠れる森の美女を覚醒させる「王子様」の特定に取り組んでいるとのことである。