いかさま引用ゲームに気をつけろ(記事紹介)

2016年07月20日

北米・中南米

ネイチャー誌7月12日付け記事"Watch out for cheats in citation game"(試訳:いかさま引用ゲームに気をつけろ、pdf:1ページ)を紹介する。この記事は論文のインパクトを重視するあまり、新たな不正が作り出されたことを警告するもの。著者はカリフォルニア大学デービス校、法律および科学技術研究、教授Mario Biagioli氏。

研究者は今や、"publish or perish"(試訳:出版せよ、さもなくば滅びよ) ならぬ、"Impact or perish"(試訳:インパクトを上げよ、さもなくば滅びよ)の圧力にさらされている。研究者にとって論文を出版するだけではもはや十分ではない。研究は影響力のある賞味期限を持たねばならない。学術論文はWeb指標(どのジャーナルで何回の引用があったか)を中心に、良いスコアを取ることが目標になってしまっている。

査読者の偽のメールアドレスを提供し、このメールアドレスを使用して論文の公開を保証する報告書を提供する。さらに"レビューと引用"の輪は、査読者の研究で引用されるように偽の好意的レビューを売り込む、という事例も報告されている。

このように、単なる評価指標のゲームではなく、指標による新種の不正を生み出しているように見える。この不正を、生産後不正(post-production misconduct)と呼ぶ。この新種の不正は広まりつつあり、少なくとも300報の論文が査読後に撤回されている。

データの改ざんなど従来の不正とは異なり、生産後不正は必ずしも科学の記録を誤った結果によって害するわけではないものの、出版システムの信頼性を損なっている。このような不正は確立したメンターの保護のもとに行われる個人による研究よりも、査読の及ばない、それ自身が不正のスキームのターゲットにされる共同研究で頻繁に発生している。

インパクトファクター、引用統計、ランキングなどの学術的指標を機関が熱心に使うことは、単にこのような悪行の動機となるばかりでなく、悪行を可能にしているのである。

[ニュースソース]

Watch out for cheats in citation game - Nature 2016/7/12