ネイチャー誌7月26日付け記事“Europe’s premier funding agency measures its impact(試訳:欧州最高の助成機関が助成研究のインパクトを測定)”を紹介する。この記事は7月26日、英国マンチェスターで開催されたEuropean Science Open Forumにおいて発表された欧州研究会議(European Research Council、ERC)の助成研究を評価するパイロット調査の結果に関するもの。
ERCは欧州の科学の質を高めるため、2007年に設立、ハイリスクプロジェクトへの助成を行っている。通常評価は助成に値するプロジェクトの選定に行われ、基礎研究のパフォーマンスとインパクトの遡及的分析を試みる助成機関はない中、ERCは助成プロジェクトの成功を遡及的に評価する異例の取り組みに着手した。
ERCはすでに完了した199件のプロジェクトについて、論文の計量書誌分析の結果を専門家に提供したが、評価には各プロジェクトを総合的に判断するよう依頼した。その結果、「科学的ブレイクスルー」と評価されたプロジェクトは43件、99件は「大きな進歩」、また7件は「特筆すべき科学的成果ではない」と評価された。また、プロジェクトの10%はすでに、経済的、政策的、社会的に大きなインパクトをもたらしており、4分の1は将来的にそうなる可能性があるとされた。
評価には限界があるものの、計量書誌分析のみによらず、質的方法論を用いたことを称賛する意見もある。ERCは評価方法について意見を求め、今後予定している250件についての評価方法の改善を図る予定である。ERC議長Jean-Pierre Bourguignon氏は、エビデンスに基づいた議論によってボトムアップの好奇心駆動型研究が社会にとって価値あるものであることを示したいと語る。