カリフォルニア大学デービス校とカリフォルニアデジタル図書館(CDL)が行ったPay it Forwardプロジェクトの最終報告書(pdf:185ページ)が公開された。このプロジェクトは購読料モデルから完全なオープンアクセス(OA)モデルへの転換を考察したもの。
Scholarly Kitchen8月9日付け記事“The Pay It Forward Project:confirming What We Already Knew About Open Access(試訳:Pay it forwardプロジェクト:OAの既知の事実)”は、この最終報告書について以下の通りに考察している。
この報告書の結果は、すでに我々が従前の調査や良識から知り得ること、つまり、ゴールドOAへの移行は生産性の高い研究機関の費用を増加させる、ということを確認するに過ぎない。
・読者はOAを大いに歓迎しているが、著者は論文掲載料(APC)への支出も、出版の場が制限されることも望んでいない。著者にとってOAか否かの優先度は低い。
・ 出版社にとってOAはもはや脅威ではない。むしろ成長を見込めるビジネスモデルとして歓迎している。
・OAは人文社会学よりも科学の分野で強固に確立し、理解されている。
・ゴールドOAの中核的な原則は、論文の消費者に広くかかるコスト負担から、論文の生産者への直接的集中的コスト負担への移行である。そのため論文を生産せずに論文をより多く消費する機関にとっては節約となる。
・図書館への助成が徐々に減り、論文の生産コストが急速に上がっている。出版社は図書館からの購読料以外のチャネルから大きな利益を得ており、その損失はこの報告書で計算される以上に著者への経済的負担となっている。
・報告書は助成金により研究の生産性が高い機関のコスト格差を補えるとしているが、研究助成が大幅に増加するとは考えにくいので、助成金が論文投稿料に使われると研究そのものに助成金が使われず、間接的に図書館の予算は現在と同じレベルに留まるだろう。
・市場の圧力により、ある時点でAPCが下落し始めると示唆しているが、著者がAPCの高いジャーナルへの投稿を選択すればあまり変化はないだろう。
[ニュースソース]
The Pay It Forward Project:confirming What We Already Knew About Open Access - Scholarly Kitchen 2016/8/9
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