PeerJ11月12日掲載のReproducible and reusable research:Are journal data sharing policies meeting the mark?(試訳:再現性、再利用可能な研究:ジャーナルのデータ共有方針は水準に達しているか、pdf:34ページ)を紹介する。本稿は生物医学ジャーナルのデータ共有方針の浸透の状況を調査したもの。
抄録
背景:科学の透明性と再現性を担保する上で、データ共有が基本的な要素であることは、生物医学研究コミュニティーで広く合意が得られている。 出版社はデータ共有を促進し、強化する上で重要な役割を果たしうるが、ジャーナルの多くは未だデータ共有方針を実践しておらず、要求事項もジャーナルによって多様である。本稿では、生物医学文献におけるデータ共有方針の浸透度と質を分析する。
方法:生物医学318誌のオンライン上の著者に対する説明と編集方針を手作業で調査し、ジャーナルのデータ共有の要件と特徴を分析した。データ共有が要求されているか、推奨されているか、オミクスデータのみを要求しているかあるいはまったく言及がないかを判断し、データ共有ポリシーをランク付けした。データ共有の方法と使用許諾の推奨、再現性あるいは同様の概念についての言及を調査した。出版数、ジャーナルインパクトファクター、ジャーナルの出版モデル(オープンアクセスあるいは購読)のパターンを分析した。
結果:データ共有を出版の条件として要求していることを明確に記述しているジャーナルは11.9%であった。9.1%はデータ共有を要求しているが、出版の決定に影響するという記述はなかった。 23.3%は著者にデータ共有を奨励する記述はあるものの、要求はしていなかった。 データ共有についての言及がないジャーナルは31.8%であった。データ共有方針を強く打ち出しているジャーナルは何らかのデータ共有に関する言及があるジャーナルと比較して、インパクトファクターがかなり高かった。オープンアクセスジャーナルは購読料モデルのジャーナルよりも、データ共有をあまり要求していないようであった。
考察:本調査は、データ共有を要求するジャーナルはごく少数であり、インパクトファクターの高さとデータ共有を要求するジャーナルは大きく関係しているとする過去の調査結果を裏付ける形となった。データ共有を要求するジャーナルの65.7%が再現性の概念に関係していたのは過去の調査の結果と同様だったが、データが最大限利用可能で再利用可能であることが確実に実践されるように明確な指針を示したデータ共有方針は、ほとんど見られなかった。