オープンアクセスの今後について想定される2つのシナリオを考察した記事 "Journal flipping or a public open access infrastructure? What kind of open access future do we want?"(試訳:ジャーナルのオープンアクセス(OA)への転換それとも公的OA基盤? 望ましいOAの未来は?)を紹介する。本記事は10月25日~27日にドイツ ベルリンで開催されたForce11での議論を取りまとめたもの。なお、Google Docではコメント付きで掲載されている。
シナリオ1:エルゼビア社とドイツ全体でのライセンス契約の締結を目指すプロジェクトDEALに代表される、ジャーナルのOA転換と購読料契約との相殺。利点として短期的効果が期待できるが、以下のような不利益が予想される。
・研究機関の資金力による格差が生じる
・アナログ的学術価値の創造を強化してしまう
・アナログからデジタルへの転換に非効率性を生じる
・平均的論文掲載料(APC)が高騰する
シナリオ2:欧州オープンサイエンスクラウド(EOSC)やゲイツ財団およびウェルカム財団によるGate Open Researchなどの公的OA基盤への投資。利点として、以下が挙げられる。
・OAの公的基盤への投資は、数社の商業出版社への依存を解消する
・データやコードポリシーなど、学術出版に必要な変革を後押しする出発点となる
・デジタル化への移行における研究図書館の役割を再定義し、活動の範囲を広げる可能性がある
・真に公的なOA基盤は場所を問わず研究者に対してオープンである
他方、包括的なガバナンス構造を構築することが難しいというデメリットがある。
今後、これら2つのシナリオが入り交ざった形で継続するであろうが、これらの望ましい比重割合を決定する必要があるだろう。
[ニュースソース]
Journal flipping or a public open access infrastructure? What kind of open access future do we want? - LSE 2017/10/26