SNSFによるOA化率100%への移行。その財政ロードマップ、予算検討は十分か(記事紹介)

2018年04月13日

ヨーロッパ

​スイス国立科学財団(SNSF)のマティアス・エッガー(Matthias Egger)理事長は「SNSFが資金提供したプロジェクトの成果物を2020年からデジタル形式で自由にアクセスできるようにする」と4月3日のOpen Access Governmentのインタビューで述べたが、そのことについて見通しが甘いのではないかとするパブロ・マールキン(Pablo Markin)氏の署名付き記事が、OpenScienceに掲載されている。

オープンサイエンスの促進がインパクトファクターの高いジャーナルの購読料上昇をももたらす中、マールキン氏は、OA化率100%達成に必要な財源の捻出や、このイニシアチブがローカル、ヨーロッパ、世界の出版市場に及ぼす影響について不確定要素が多すぎると、記事の中で指摘している。その論拠として、以下の3点を挙げている。

・2018年4月および10月から、スイス国内の科学者らはSNSFから論文掲載料(APC)支払いの援助を受けられるが、国内の大学や組織の研究すべてをSNSFが援助するわけではないので、高ランクのジャーナルがOAに切り替えるか、科学者らが購読料を支払うジャーナルよりもOAジャーナルを好むという状況にならない限り、政策の浸透が滞る可能性が高い。

・新たなOAジャーナルの立ち上げには多額の先行投資や費用を要するため、一つの組織で行うには限界がある。最近立ち上がった生物科学分野のOAジャーナルが複数機関の共同による立ち上げだったことからも、その結果は明らかである。

・オープンサイエンスへの移行は、世界的科学コミュニティーにさまざまな利益をもたらす。しかし、OAポリシーやイニシアチブが科学研究の成果物の普及における大手パブリッシャーの役割を小さくすることはなく、むしろ、パブリッシャーらのこれまでの経験や存在(presence)がOA政策や市場開発に大きな影響を与えるものと予想される。

[ニュースソース]Policy-Making May Fall Short of Charting Financial Roadmaps for and Underestimate Costs of Open Access Transitions - OpenScience.com 2018/04/05

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