カナダにおけるOAの過去・現在の姿と今後の挽回(記事紹介)

2023年04月27日

北米・中南米

カナダの大学に関連する情報を提供するWebサイトUniversity Affairsは、4月19日、"Catching up on open access"と題する記事を公表した。

本記事は、10年ほど前は最前線に立っていたものの現在は立ち遅れてしまったカナダのOA(オープンアクセス)について、過去・現在・未来の姿を概説したもの。

本記事では、2015年にカナダの3つの政府助成機関であるNSERC(Natural Sciences and Engineering Research Council)、SSHRC(Social Sciences and Humanities Research Council)、CIHR(Canadian Institutes of Health Research)が共同で採択したOAポリシーを更新する必要があると指摘。同ポリシーでは、3機関から助成を受けた研究成果論文の出版後12カ月以内の公開を求めているが、8年後の今、米国OSTP(Office of Science and Technology Policy、大統領府科学技術政策局)が発表した覚書や、Plan SのOAポリシーに沿った即時公開への対応が求められるとしている。

また、カナダの研究者のOAポリシーの遵守の意識は低いと指摘。2015年から2018年に発表された3機関から助成を受けた研究成果論文のうち、OAで公開されているものは半数以下であること、ただし、OA率は分野によって差があることなどを示している。

2020年にチーフサイエンスアドバイザーが"Roadmap for Open Science"を導入したことで、今後、連邦政府が所有する多くの研究所で行われた研究が即時公開される見込みであるという。

一方、OAを推進する上での課題として、ジャーナルでの論文出版に多額の費用がかかること、出版社がTA(Transformative agreements、転換契約または移行契約)など収益を確保する方法を見つけようとすること、研究者の評価として大手商業出版社のインパクトの大きいジャーナルでの出版の方が価値があるとされていることなどを挙げている。これらの課題を踏まえてOAへの移行を実現するためには、トップダウンの政策が必要であると述べている。

[ニュースソース]

Catching up on open access - UA 2023/04/19 (accessed 2023-04-25)

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