JISC報告書「選択的出版モデル」に欠けている視点

2010年03月31日

アジア・オセアニア ヨーロッパ

英国情報システム合同委員会(JISC)の報告書「選択的出版モデル」は意義あるも、このような見方が必要ではないかとした論考2本がPrometheus 2010年3月号(第28巻第1号)に掲載されている。

ひとつは、英サルフォード大学Martin Hall 氏の"Minerva's owl. A response to John Houghton and Charles Oppenheim's 'The economic implications of alternative publishing models' "(ページ61-71)。

JISC報告書の著者が費用便益分析のベースとして主に用いた「学術コミュニケーションのライフサイクルモデル」は知の活用法の適切な代用となるのか、学術出版への公共投資は知識経済に対する最善の見返り確保方法なのか、講読出版の問題点はOAより費用がかかるということより、学術知識創出ライフサイクルのある段階で出版社は品質にマイナスに働くような使用料(rent。同報告書では"tolls")を引き出すことにあるのではないかなどと指摘する。

もうひとつは、英ランチェスター大学Christopher May氏の"Openness in academic publication:the question of trust, authority and reliability"(ページ91-94)。次の3点に焦点を当てている:(1)公表された研究成果の権威・信頼性、(2)出版社が学術コミュニティ信頼性問題でback-stop(バックネット、捕手)として果たした役割、(3)オープンネス自体にある学界の社会的費用。

[ニュースソース]
Minerva's owl. A response to John Houghton and Charles Oppenheim's 'The economic implications of alternative publishing models' - Prometheus, Volume 28, Issue 1 March 2010 , pages 61 - 71
Openness in academic publication:the question of trust, authority and reliability - Prometheus, Volume 28, Issue 1 March 2010 , pages 91 - 94
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