ビッグ・ディールの考察(論文紹介)

2013年02月06日

北米・中南米

"Open Access, library and publisher competition, and the evolution of general commerce"(PDF36ページ)と題する論文暫定版が2月4日、公開された。ビッグ・ディール(Big Deal)について考察したもので、著者は、ミネソタ大学数学部のAndrew Odlyzko氏。

(Abstract試訳)
学術コミュニケーションのエコノミクスに関する論議は、通常、オープンアクセス(OA)、雑誌の価格高騰、出版社の利益、ボイコットなどをテーマとしているが、もっと重要なことがらが見過ごされている。出版社は、よく非難されるビッグ・ディール(Big Deal)を通じて、ジャーナル文献へのアクセスをより広く平等に提供しており、真のOAに近い。いつの間にか図書館の存在意義を奪い、学術コミュニケーションの取り扱うリソースのシェアを大きく占めるようになった。これにより、出版社の利益確保と、数十年にわたって言われている「持続不可能なジャーナル価格高騰」を維持することができている。また、OAの普及を抑止し、大規模ライセンスによって流通を支配する出版社の寡占を招いている。Big Dealという商慣習は、いくつかの理由で、調査に値する。出版社が図書館の役割をうまく縮小させる度合いは、大学の変革の度合いとスピードの指標となろう。さらに重要だが、ビッグ・ディールは、経済全体の今後の方向性-プライバシー低下、価格差別の増大、価格設定の不透明性増大、利潤追求のための低賃金・無償労働への依存度増大、顧客の惰性(customer inertia)に依存するビジネスモデルが特徴の経済発展-を示しているように思われる。

[ニュースソース]
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