英国: 上院・科学技術委員会、「RCUKのOA方針は不明確」として見直しを勧告

2013年02月22日

ヨーロッパ

上院・科学技術委員会(The House of Lords Science and Technology Committee)は2月22日、英国研究会議(RCUK)のオープンアクセス(OA)方針実施に関する調査報告書"The implementation of open access"(PDF28ページ)を公表した。

各方面から寄せられたエビデンス(小欄直近記事はこちら)を検討した結果、「RCUKのOA方針は明確さに欠け、これを容認することはできない。見直しが必要。」としている。

(SUMMARY試訳)
OA出版の増加、特に査読誌論文の無償オンライン提供は、研究成果の伝達に大変革をもたらしている。政府は、独立作業部会(Finchグループ)に公的助成研究成果へのアクセス拡大方法の検討を委託し、RCUKは、その報告書を受け、OA方針を改定した。当該方針は、出版界・学界に相当の懸念をもたらした。出版社は方針の要件を懸念し、学会は、各コミュニティを支えるための貴重な収入源を失うことを懸念した。学者は、万能(one size fits all)な方法をとる方針と、予想外の結果(査読の質が低下し、共同研究や最良ジャーナルでの出版の自由が制限されることなど)が生じる可能性を懸念した。出版界・学会とも、十分な相談がなかったとして不満を表した。

こうした懸念を踏まえ、当委員会は、RCUKのOA方針実施計画を検討し、改定を勧告するための調査を実施した。結論は以下の通り。

●RCUKは、当初5年間の方針実施段階における漸進的遵守方法を反映させ、方針を明確化せよ。
●RCUKは、OA方針の効果をモニターし、2014年秋のレビューでは以下を考慮せよ。
(1) 分野の違いによるエンバーゴ期間、ライセンス条件、出版モデルの違いの必要性 – 特に、読者数(readership)と引用半減期の観点で。
(2) Gold OA優先の英国が、OA(Goldに限らない)を義務化する他国と同方向に動いているか。
(3) 論文掲載料の国内誌掲載国際論文数に対する悪影響の有無
(4) 査読の質への影響
(5) 国内の共同研究へのインパクト
(6) 学会への影響
●政府は、Gold OAを優先したことに鑑み、この方針の費用対効果の分析を本格的に行え。
●政府は、重大な方針変更に関するRCUKのコンサルテーションの有効性を精査せよ。

Finchグループレポートは、研究コミュニケーションの複雑な生態系(complex ecology)へのダメージを避けるため、OAへのスムーズな移行の必要性を強調した。同感である。政府とRCUKは、RCUK のOA方針問題に対処するための措置を直ちにとり、中間軌道修正の必要性に備え、情報収集を続けよ。

[ニュースソース]
Lack of clarity over open access is "unacceptable" – RCUK must clarify and monitor its implementation closely – www.parliament.uk