Nature誌の6月4日付記事"Tensions grow as data-mining discussions fall apart"を紹介する。
これは、先日小欄記事「LIBER等の研究・技術関係者、ECの"License for Europe"から脱退 - 運営方針に異を唱える」で紹介した一波乱を報じたもので、大略は以下の通り(小見出しは便宜的に付けた)。
背景
研究者は大量のオンライン論文をコンピュータでクロールしたいが、欧州始め多くの国では、著作権者の許可が必要だ。所属機関がジャーナルアクセス料を支払っていても、研究者はテキストマイニングができるとは限らない。出版社はマイニングプログラムをブロックし、個別許可しか与えないから。著者がマイニングを認めていたとしても、だ。なお、米国ではFair Useの解釈次第でマイニングが可能。
こうした中、限界のある現在の著作権法を改定し、違反を心配することなくマイニングできるようにしてほしいという要請が研究者から出ていた。
同床異夢
ECは2012年12月、"License for Europe"の中に作業部会を設置し、新ポリシーの討議を開始したが、議論はテキストマイニング条件に終始し、著作権法改定の話には至らなかった。討議にはEUの4管理部門も参加したが、関係者間の利害対立もあり、まとまらりがつかなかったのが主要因。これ以上討議を続けても無意味として、LIBERなどのメンバーが5月22日、脱会した。
今後
・"License for Europe"プロセスを本年7月に見直し、本件への対応を決める。
・EC域内市場部門が著作権改革の必要性を分析中。結果次第で弾みがつく。
・出版社間でもテキスト・データマイニングに賛否両論があり、科学者や図書館員は役人との話し合いを続ける。
・ライセンスにより又は著作権法改定でテキストマイニングが許可されたとしても、出版社のサーバーへの過度なトラフィック対策が必要。また、出版社はクローリング目的の確認手段を講ずる。CrossRefの年内発表予定の技術がこうした現実的な障害対策となろう。