研究者のPLOSデータ共有方針への戸惑い(記事紹介)

2014年12月01日

ヨーロッパ

PLOSは2014年3月3日より、論文の根拠となるすべてのデータを論文公開後すぐに制限なく公開することを義務付けるデータ共有方針を適用しているが、必ずしもこの方針は守られてはいない。

11月26日付けネイチャー誌記事" Confusion over publisher's pioneering open-data rules(試訳:出版社のさきがけとなるオープン・データ・ルールへの戸惑い)"では、PLOS同様にオープン・データを義務化しているMolecular Ecologyのマネージング・ディレクターTim Vines氏等が2013年初期に行った、方法が異なる4つのオープンデータ方針の有効性に関する調査を元に、その原因を考察する。

集団遺伝学解析ソフトウェア"STRUCTURE"を使用している論文について、データ共有されているか否かを調べたところ、2013年の調査ではPLOS投稿論文51件のうちデータ共有していたものはわずか6件(12%)であった。PLOSがデータ共有を義務化した2014年3月以降に投稿されたSTRUCTUREに言及している論文20件について新たに調べたところ、8件(40%)が遺伝子型データを共有していた。

義務化後もデータを共有していない60%について、その理由を調査したところ、「データのアップ・ロードのし忘れ」、「ジャーナルの編集者やレフリーがデータ共有を求めなかった」、「適切なパブリック・データ・リポジトリがあるのか知らない」などの理由のほか、「将来の研究のためにデータを秘密にしたかった」、「将来の研究にも使いたいので、この意図を知っているもの以外には共有したくない」、「共同研究の見込みのある研究者には喜んでデータを共有するが、努力して集めたデータをそれ以外の研究者には共有したくない」など、データ共有を阻害する要因が浮き彫りとなった。

Vines氏いわく、「義務化により、データ共有の状況が以前よりもましになったとはいえるが、問題は著作者の教育である。2011年にデータ共有を義務化したMolecular Ecologyでさえ、およそ半分の論文についてデータセットのアップロードを催促しなければならない状況である。意識変革にはもうしばらく時間が掛かりそうだ。」

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