ネイチャー誌6月3日付け記事“Sluggish data sharing hampers reproducibility effort(試訳:データ共有の遅れは再現性の努力を阻む)”を紹介する。以下記事を要約する。
6月3日にブラジル リオデジャネイロで開催された第4回研究公正に関する世界会議(World Conference on Research Integrity)において、がんに関する論文成果の立証を目的とするプロジェクトで、論文の元となった研究データの入手の遅れが思わぬ障害となっていることが明らかとなった。
がん生物学コンソーシアムの再現性イニシアチブは、2010-12年にネイチャー、セル、サイエンスなどのジャーナルで公開された被引用数の高い50本の研究論文に記述された実験を繰り返し、その結果の再現がどのくらい容易かを確認することを目的としている。これらジャーナルは著作者にデータの共有を要求したが、データの入手には平均で2か月ほどかかった。中には1年ほどかかった事例や、協力が得られなかった事例もあった。
著作者の多くは結果の立証に協力的ではあったが、データを探し出すのに予想以上の時間がかかり、また論文に使用した実験資源を特定することが困難な事例もあった。
プロジェクトリーダーの一人、William Guann氏によれば、このイニシアチブでは、研究結果の再現に成功したか失敗したかより、むしろ再現における問題、すなわち論文における方法の記述が正確ではなかった、または特定の実験の種類によっては再現が難しかった、といった結果の再現性における問題を特定し、2015年末にその結果をまとめるとしている。