科学ジャーナル出版の変革:ベルリン12以降のオープンアクセス(記事紹介)

2017年04月05日

ヨーロッパ

Information Services & Use vol. 37 no. 1 3月7日掲載の研究論文"The transformation of scientific journal publishing: Open access after the Berlin 12 Conference"(試訳:科学ジャーナル出版の変革:ベルリン12以降のオープンアクセス)(pdf​:5ページ)を紹介する。本稿は、オープンアクセス(OA)への移行を財務的な体系化により実現しようとするマックスプランクデジタル図書館が主導する国際的なイニシアチブOA2020に関するもの。著者はマックスプランクデジタルライブラリーのRalf Schimmer氏。

抄録

過去10~15年、OAはほとんどではないにせよ、多くの国や国際的研究組織の共通ビジョンとなっている。原則としてのOAは研究政策の国際的議論の中で定着しているが、現実には、従来的購読料に基づく出版システムが、本来的に持っているアクセスや利用に関する制限や、21世紀のWebを基本とした出版システムの可能性から明らかに孤立しているにもかかわらず、依然として活気に満ちており、今だ転換には至っていない。OA2020は出版システムを取り引きの側面から見た新しいアプローチと、キャッシュフローが体系化される方法を提示する変革的取り組みである。出版と財務データは、このような転換が実現可能であることを示す方法において一つにまとめられる。OA2020は、研究成果が出版されてから最終的にOAとなるために、この転換がどのように生じるのかその道筋を提示する。2003年以来、ベルリン会議は、時代遅れの商業的慣行を購読料ビジネス後のモデルに転換することにより、論理的根拠がジャーナル出版のOAを達成するという過程において中心的役割を担っている。ごく最近までこのイニシアチブの主たる関心は、「OAへと研究者を向かわせる」取り組みの前提となる、認知の向上、義務化、多様な実践的方法の考案であった。現時点で学術論文がOAとして利用可能なのは年間約15%にすぎない。年間約1%の割合で増加しているものの、購読料システムに変革的圧力を加えるほどにはなっていない。そのため、「研究者へとOAを向かわせる」という反対方向からのやり方に変え、課題に取り組むべきときであるように思われる。