TAだけでOAは進まない。リポジトリの重要性を説くCOARの反論(記事紹介)

2022年08月17日

北米・中南米 ヨーロッパ

​COAR(Confederation of Open Access Repositories、国際オープンアクセスリポジトリ連合)は、8月9日、"Transformative agreements are not the key to open access"と題する記事を公開した。

本記事は、THE(Times Higher Education)の記事において、TA(Transformative Agreement、転換契約または移行契約)が完全OA(オープンアクセス)達成への近道であると主張したSpringer Nature社のCPO(Chief Publishing Officer)に、同連合のExecutive Directorが反論したもの。

本記事では、TAのような契約形態は、資金が潤沢な機関や国のみが利用できるものであることに加え、同契約形態がジャーナルをOAに転換するものではなく個々の論文を有料化するものであること、ジャーナルの完全OA化を目指すTJ(Transformative Journal、転換ジャーナル)についても懐疑的であることなどに言及。

リポジトリのコンテンツはVoR(Version of Record)よりも品質・視認性が低いとするCPOの主張に対し、arXivやPubMed Centralのようなリポジトリに登載されている論文は、VoRと同じ内容のものであり、利用率・引用率も高いなどと反論した。

また、研究コミュニケーションの効果を最大化するには、論文だけでなく、データ、コードなど多種多様なコンテンツへのアクセスが必要であることに言及。

リポジトリは、歴史のある研究機関や図書館などのコミュニティーによって支えられていることや、外部の査読サービスやオーバーレイジャーナルなどとリンクし従来の学術出版の代替となる低コストかつ柔軟な選択肢を提供していること、言語的多様性の確保や出版社の値下げ・サービス改善圧力の一助になるなどと主張した。

[ニュースソース]

Transformative agreements are not the key to open access -- COAR 2022/08/09 (accessed 2022-08-10)